試験

 ある良い集まりから帰る途中、駅のホームでベンチに座って首をひねっていると、隣のおばちゃんに、「首が痛いの?」と言われた。はい、ちょっと。ハンカチ貸して。いまもっていないです(と警戒して嘘をつく私)。
 おばちゃんはかばんからハンカチを取り出し、私の前に立って、私の左肩や左首にハンカチを当て、マッサージを始めた。力の強さや、押さえる所は、明らかに素人ではなかった。
 特急が来て、電車の中でもマッサージをしてくれようとしたが(電車の中だと恥ずかしい?)、私は特急ではない、と伝えると、おばちゃんは私の左首をとん、とん、と最後に強くマッサージをし、電車に乗った。
 扉が閉まって、扉近くにいるおばちゃんに会釈をすると、おばちゃんも私の目を見て頷いた。
 少しも疑わなければ良かった、と思った。左肩から左首にかけて、温かくなって、痛みは取れていた。