2008-04-01から1ヶ月間の記事一覧

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街の方を見ながら、時々立ち止まり、辺りを歩いてみたけれど、中々好きな所が見つからなかった。おじいさんは絵の前で、じっと座っていた。 街の方を見るのをやめて、小屋に近付いていった。恐る恐るドアを開けて、煙の匂いを嗅いだ。何とか入れそうだと思い…

『文学と人生』2

同じものの中の異なっているもの、異なっているものの中の同じもの、を書こうとしてきた、と小島信夫さんは言っている。それは無でもなく有でもない、空に到る道、という感じがする。絶体絶命の時の2択、どちらにも救いがないと思える時、どうするか? 分か…

感慨のないくらいに

古い知り合いの女性から、毎日だいたい午後6時頃、電話がかかってくる。タイミングが良く、今の所、ほぼ全ての電話に出ている。今日聞いたのは、いちご狩りに行ってきたということ。70個ほど食べたという。そんなに、と少し思う。昨日は父に電話したという…

一人でやること

どうすれば、何にも頼らずにいられますか、と聞いて、文学を一番に考えてください、という言葉を思い出した。自分の中に、一つ柱を据えなさい。 理屈を捏ねるのはなしです。腰を引かずに、やってみなさい。あちらへこちらへ行きたいとは、もう思わない。 手…

先週末

小川国夫さんのことについて、何か書こうとしています。 静岡県は藤枝に、駆けつけようとして、駅の階段で転びました。 お墓参りのときには、絶対に転んではいけない、良くないことがあるから、と子供の頃よく言われました。 あれは本当は、気が動転していた…

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「それは、元生くんにもらったの?」 筆を足元のパレットに置いて、振り返り、僕の持っているトートバッグの中を覗き、少年ような口調で、少し高い声で、おじいさんは言った。 頷くと、 「お茶を持ってきているから、一緒に食べようか」 と言うと、おじいさ…

『文学と人生』

万年筆が、洗濯機から出てきた。あるシャツの胸の所に青黒い染みがあったのは、そういうことだったのか、と気付く。でも、万年筆はぴかぴかになっている。部屋を少しだけ片付けて、瞑想をするが、すぐに眠ってしまった。なんとか起き上がって、洗濯物を干し…

質問の答え

古い知り合いの女性から、度々電話がある。『公衆電話』と画面に表示されたら、ほぼ間違いなく彼女の電話だ、と分かる。彼女と話すことに対して、恐怖心はほとんどなくなっている。彼女が表面的に変なことを言おうとも、その向こうにある感情は、変でも何で…