2011-07-01から1ヶ月間の記事一覧

「白魚のような手には程遠いけど」辻絵里(『アフリカ』第11号)

手から、返事が返ってこない、というのは、ほっとします。変な言い方をすれば、それは責任感から来ていると思った。何かのせいにしない人である気がした。かといって自虐的な感じもしないのは、自然で素敵だと思った。 不安と緊張、ということが背景のテーマ…

「ゴゥワの実る庭(二)」中村広子(『アフリカ』第11号)

次から次へ、とめどなく、という感じで、巻き込まれる。ずっとあわただしく、情報の波の中で、がしゃがしゃしている。周りががしゃがしゃしているから、静けさとしての自分が浮き彫りになる。自分の意思や、生命が浮き彫りになる。 臨機応変に、一瞬一瞬反応…

滑らかな運転

「この辺、全然変わってないなぁ」 と、武庫之荘に一人送った後、運転している女性は言った。 「ずっとこの辺りに住んでたんですか?」 と、当たり前のことを、助手席に座っている僕は、息を吐くように言った。 「そう」 と、変わらない調子で女性は言った。…

「旅芸人のように」角野晃司×下窪俊哉(『アフリカ』第11号)

雑談に、感想を言うのは、尚更ぼや、じゃなくて野暮だと思いますが、シガレットマスクを見て、もし顔の一部が見えていたら、とても怖い、と思いました。蓑虫なう、の方は、反対に、顔が見えていなかったらとても怖い、と思います。考えていることと、出来上…

「夜の航海」守安涼(『アフリカ』第11号)

『何かよい手はないものかと考えていて思い出したのが、幼い夜、母親に灰谷健次郎を読んでもらったという友人の話だった。』 『うつくしい写真と文章で伝えられていた。』の所で、少しだけ情景を見たいなぁ、と思う。でも、ストイックだなぁとも思うし、厳し…

「指笛とひらがな」犬飼愛生(『アフリカ』第11号)

感想を書く、ということは、野暮なことかもしれない。そうじゃない感想もあるかもしれない。代わりが利かないから、創るということなのだから、本当は、僕も創れば一番いいのだろう、、、、、作者とも作品とも、関係なかったり、感想を書いた後も、別の感想…

「暁雲によせて――追悼・井川拓」下窪俊哉(『アフリカ』第11号)

『彼とのつき合いは、その後、短いけれどたいへん深いものになった。けれど、なぜか、くり返し、くり返し思い出されるのは、その朝の情景なのだった。』 読み終わって、最初に思ったことは、あ、終わってしまった、ということだった。短いことが、切ない。切…

「はるのあるべき」郄城青(『アフリカ』第11号)

『彼らは普段ひとの死とこんなに近くで向き合う仕事をしているわけではないのだと思う。』 べき、という言葉自体が嫌いではない、と作品中に書かれています。その証拠に、この作品のタイトルは、『はるのあるべき』です。決めつけるような言葉が、明るい言葉…