2008-07-01から1ヶ月間の記事一覧

風を送る

辞めていく人に言える言葉を、僕は持っていない。暗い感じでも、悲しい感じでもない辞め方だ。でも、明るいとも言えない。彼を批判することには意味がないし、かといって手放しで賛成も出来ない。出来るだけそっと離れていくこと、お互いに次のことに集中で…

煙草

どこかの喫茶店で、O先生と、S先生と、私も含めたその先生たちの教え子が、軽い夕食を食べ、一息ついていた。S先生と私は、煙草を吸った。O先生は吸わなかった。君は、夕食の後に煙草を吸うことにしたんだな、とO先生は言い、私は何か言おうとしたが、それを…

試験

ある良い集まりから帰る途中、駅のホームでベンチに座って首をひねっていると、隣のおばちゃんに、「首が痛いの?」と言われた。はい、ちょっと。ハンカチ貸して。いまもっていないです(と警戒して嘘をつく私)。 おばちゃんはかばんからハンカチを取り出し…

太陽の塔体験

昨日、太陽の塔を初めて見る。駅前から見る。大きい。中央口から公園に入る。広場越しに見る。すごい。デジタルカメラを構える。そこに映る姿は全然違う。全然だめだ。直接見る。やっぱり全然違う。近付いていく。すごい。違うのは解っているけど、写真をい…

14

「感じは掴めてきましたか」 左隣で、岡本さんの声が聞こえ、目が覚めた。 真っすぐ顔を上げたら、紅い眩しさがあって、薄くしか開いていなかった目をもっと薄めた。 膝の上に、トートバッグが載せられた。それを見るのは、それほど眩しくなかった。 「そろ…

透明な人違い

おつかれさまです、と駅で声を掛けられる。男性が二人。どこかで見たことのあるような、大学で一緒だった、音楽をやっている人だったのかもしれないが、やはり見たことのない二人に、今日も一緒だったと、いう感じに話し掛けられ、どこまでですか、塚口まで…

ウィンブルドンが終わって、感情的なこと。

今日は、フェデラー疲れが残っていて、喪に服しているみたいな心境だった。あれほど人を応援したのは、何年ぶりか。深夜に一人で、力を入れてテレビを見ていた。昨年の二人(ロジャー・フェデラー、ラファエル・ナダル)の情況で、ぎりぎりフェデラーの勝利…

小川国夫さんの『止島』より

――荒れはてていましたがね、あのころは毎日が輪郭鮮明じゃあありませんか。今は毎日がどんよりしています。灰か土埃をかぶっています。 ――本当だ。それは本当ですね。 ――以前のほうが澄んでいます。 ――わかった、岩原さんは原始人なんだ。 ――人間はみんな原…