2011-01-01から1年間の記事一覧

「白魚のような手には程遠いけど」辻絵里(『アフリカ』第11号)

手から、返事が返ってこない、というのは、ほっとします。変な言い方をすれば、それは責任感から来ていると思った。何かのせいにしない人である気がした。かといって自虐的な感じもしないのは、自然で素敵だと思った。 不安と緊張、ということが背景のテーマ…

「ゴゥワの実る庭(二)」中村広子(『アフリカ』第11号)

次から次へ、とめどなく、という感じで、巻き込まれる。ずっとあわただしく、情報の波の中で、がしゃがしゃしている。周りががしゃがしゃしているから、静けさとしての自分が浮き彫りになる。自分の意思や、生命が浮き彫りになる。 臨機応変に、一瞬一瞬反応…

滑らかな運転

「この辺、全然変わってないなぁ」 と、武庫之荘に一人送った後、運転している女性は言った。 「ずっとこの辺りに住んでたんですか?」 と、当たり前のことを、助手席に座っている僕は、息を吐くように言った。 「そう」 と、変わらない調子で女性は言った。…

「旅芸人のように」角野晃司×下窪俊哉(『アフリカ』第11号)

雑談に、感想を言うのは、尚更ぼや、じゃなくて野暮だと思いますが、シガレットマスクを見て、もし顔の一部が見えていたら、とても怖い、と思いました。蓑虫なう、の方は、反対に、顔が見えていなかったらとても怖い、と思います。考えていることと、出来上…

「夜の航海」守安涼(『アフリカ』第11号)

『何かよい手はないものかと考えていて思い出したのが、幼い夜、母親に灰谷健次郎を読んでもらったという友人の話だった。』 『うつくしい写真と文章で伝えられていた。』の所で、少しだけ情景を見たいなぁ、と思う。でも、ストイックだなぁとも思うし、厳し…

「指笛とひらがな」犬飼愛生(『アフリカ』第11号)

感想を書く、ということは、野暮なことかもしれない。そうじゃない感想もあるかもしれない。代わりが利かないから、創るということなのだから、本当は、僕も創れば一番いいのだろう、、、、、作者とも作品とも、関係なかったり、感想を書いた後も、別の感想…

「暁雲によせて――追悼・井川拓」下窪俊哉(『アフリカ』第11号)

『彼とのつき合いは、その後、短いけれどたいへん深いものになった。けれど、なぜか、くり返し、くり返し思い出されるのは、その朝の情景なのだった。』 読み終わって、最初に思ったことは、あ、終わってしまった、ということだった。短いことが、切ない。切…

「はるのあるべき」郄城青(『アフリカ』第11号)

『彼らは普段ひとの死とこんなに近くで向き合う仕事をしているわけではないのだと思う。』 べき、という言葉自体が嫌いではない、と作品中に書かれています。その証拠に、この作品のタイトルは、『はるのあるべき』です。決めつけるような言葉が、明るい言葉…

空気のそんな感じ

空気のちょっとした動きで、その動きには名前はないけれど、その感覚は、ある店のある時に似ていて、急にその日本家屋のお店のことを思い出した。同い年の女性と、昼食を食べて、お茶を飲んで、5、6時間話をしていた。僕の話、というよりも話し方は分かり…

笑顔、雨が降っている

ストレートに打った球が、ラインに乗って、擦れる音がした。ストレートのことを、テニスではダウンザラインというが、うまく行けば、まさしくダウンザラインという感じだ。素人でも、スピードが遅くても、ダウンザラインなのだ。 追い詰められて、コートに背…

雨が降らない、疲れはやさし

朝8時から、隔週日曜日恒例の、テニスの朝練に行く。雨が心配だったが、出発するときは降っていなかった。やっている最中も、ぱらぱらとしか雨が降らなかった。二回こけて、二回スマッシュがボディに当たった。頭は起きていたが体は起きていなくて、ぼろぼ…

プリンスカップと、纏まらないこと

昨日は、高校生の時に以来になる、テニスの試合に出た。かねてから約束していた人と、ミックスダブルス(男女混合ダブルス)に出た。ラケットはいつも使っているものではなく、その大会主催のメーカーのもの(prince)を使用しなければいけなくて、僕もその…

休む場所

言葉は、植物のようだ。自然に触れていると、内から湧き上ってくる。触れていないと、枯れてしまって、言葉もなくなってしまう。ゆったりとした時間も必要だ。眠る時間も必要だ。水と、土と、太陽と、肥料も必要かもしれない。それが何の比喩かは、色んな余…

発散4

夜にテニスをすると、目がついていかず、カンで打っているような感じになった、たとえ相手が誰であっても、負けることにはやはり悔しいという気持ちがあるが、勝ちたいかと言われれば、うん、とは素直には言えない、誰かと比べたいわけじゃない、比べたら、…

発散3

大変なことを、楽しそうな顔をしてやっている人は、ローカルな芸能人のようになっていて、良くも悪くも言われるけれど、大変そうな顔をしていたら、良くも悪くも言われないだろう。その人はやっぱりすごいなと、少し殺伐とした別の空気に触れると思い、勝ち…

比べないことの深み(つまり一つ)

ピアノを一週間に一回、少しの時間だけ弾く。片手が音が切れないように、もう片手が音を切るように、ということや、片手の音量は大きく、もう片手の音量は小さく、ということは、とても困難で、たどたどしいうえ、自分の出した音を聞く余裕もないうえ、音感…

A級順位戦最終戦

3月2日の朝10時から、将棋のA級順位戦の最終戦が始まった。 この対局で、名人戦の挑戦者が決まることになっていた。6勝2敗で並んでいた渡辺竜王と森内九段。同時にそれぞれの対局が始まって、両方勝てば、プレーオフ。片方が勝てば、その人が挑戦者に…

ケーキ

同僚と、帰りに勤め先近くで有名な洋菓子屋に立ち寄った。僕も甘いものが好きだが、彼は僕よりももっと好きだった。彼は立ち寄っても寄らなくてもいいという感じだったが、本当はいきたそうだったので、付き合うことにした。僕が買ったケーキは、一番下がタ…

パンク修理

昨年末から自転車をパンクしたままで直さないままでいてしまったが、今日は近くの自転車屋に直してもらいに行った。この自転車を購入したのは、もう少し遠くの大手自転車チェーン店だったけれど、手で牽いていくのはちょっと大変そうだったから、近くの昔な…

Wilson SIX ONE TOUR BLX 90 US MODEL

午前中は、注文しておいた商品が届いたり、光回線の工事をしてもらったり、5、6人の人が家にやってきた。そのために今日の朝早起きをして、部屋の片づけをした。とりあえず、居間だけはきれいになった。これ以上きれいにするには、捨てることが必要だ。少…

15

エスカレーターのチューブの中に入ると、駆動音が反響して聞こえた。チューブの天井は近く、居心地が悪く、戻りたい、と思ったけれど、引き返すには遅い、と思った。急いで上り切るというのも、恐いと思った。途中で疲れて動けなくなると、どうしようもなく…

陶器

チケットを買おうと、並んでいると、後ろの女性から、「まだ券はもっていないんですか?」と聞かれた。「はい、まだです」というと、「これ使いませんか?」とプリントアウトした割引券が、彼女の手にあって、彼女は笑顔で、おしゃれなフレームのメガネをし…

和敬清寂

今年の僕の一番の目標は、部屋をきれいにすることです。色んな道具を使い分けて、巧みに駆使し、時には切り捨てながらも思い出は引き連れて、未来につづく道を切り開きたいと思います。 今日はオムカレーを食べました。天津飯のあんの部分がカレーに変わった…