芯の芯に当たる音

おのれの
得るところに
軽んずるなかれ
しかして
他をうらやまざれ
他をうらやむ比丘は
三昧(やすけさ)をうることなし
(法句経三六五)


今日は、HPオープン女子テニスを観に行った。
プロの試合を生で観るのは初めてだったのでどきどきした。
ストーサーは、しなやかで強靱な体をしていた。ジャンプして打つキックサーブがすごかった。コート横から見ていたので、馴れない最初の内はボールを見失うほど速かった。ストロークは、ラケット面が真下を向くくらいトップスピンをかけていた。
スキアボーネは、バックハンドに来るキックサーブを、ジャンプしながら打っていた。片手バックハンドの高い打点は、どんなすごい選手でもとてもつらいのだが、ジャンプする勢いで体をひねってうまく力を入れていた。片手バックハンドを使う女子選手らしく、ガチッとした筋肉質の、逞しい体をしていた。(そうでない人もいます。)
二人とも打球音が、ガツ、という音だった。芯の芯を食っていて、ガットも硬くて、そんな音になっている気がした。当たり前だけど、ボールをラケットに当てるのがすごいうまいのだった。ドライブボレーとかも、全然芯からずれずに、同じいい音で打っていた。芯の芯を少し外れても、いい音はしてちゃんと打てるけれど、あんなに力の乗ったボールにならない、それが一番のプロとそうでない人の違いである気がした。
スキアボーネは、一度股ぬきショットをした。ポイントはとられたけど、会場はわっとなった。ちゃんとしたのは初めて観たので僕もわっとなった。敗色濃厚な時だったけど、プロフェッショナルだと思った。
二人が譲らず試合を進めているとき、一瞬強い風が吹いた。それ以降流れがストーサーの方にするすると渡っていった感じがした。
ストーサーは、シングルスではWTAツアー初優勝だった。
シングルスの審判のギリシャの女性は、よく通る落ちついた声の、美人だった。水色のカッターシャツを着て、白いパンツで、金色の髪の毛で、絵に描いたように爽やかだった。
シングルスの試合だけだと思ってたのに、その後ダブルスも観られて贅沢だった。4人とも、ハーフボレーもドライブボレーも平気で、ガツガツと打っていた。