『文学と人生』2

 同じものの中の異なっているもの、異なっているものの中の同じもの、を書こうとしてきた、と小島信夫さんは言っている。それは無でもなく有でもない、空に到る道、という感じがする。絶体絶命の時の2択、どちらにも救いがないと思える時、どうするか? 分からない、どちらにしても助からない、というのが答えだとしたら、それはちょっと、笑ってしまうんじゃないか。
仏教には、分かった気になることを避けさせる、という方向がある。それは分かることはない、深遠な知恵だ、でも分かる可能性は持っている。だから、子供のように、ただそれを、実現してみようと、出来る限り試みる。もしそのような気持ちになれないとしたら、何かを分かった気になっているからだ、と言っているように思える。