休日の電話

彼女の写真は、一枚も残っていない。全て燃やした、忘れようとして、と聞いた。
なので、会ってみないと、姿が分からない。
でも、なんとなく、美人だった気がする。
小さい頃は、沢口靖子さんをテレビで見るたびに、彼女のことを思い出し、
似ていた気がしていた。(ということを思い出した。)

電話では何度も話しているけれど、呼び掛けたことはない。僕が使ったことのある彼女に対する呼び名は、大人では使うのが恥ずかしい呼び名のまま、止まっている。それにつられてか、父に対しての呼び名も、止まってしまっている。呼べるのは、祖母だけなのだが、不自然とは、感じてこなかった。

気は強くないといけない、と感じた。そうでないと、率直になることも出来ない。
おそらく、彼女を訪ねることが、必要なんだろう、と、少しずつ、気持ちが固まっていっている、と思いたい。


祖母にも父にも本当に心から感謝をするためにも、彼女に会わないといけない、という気持ちに、少しなってきた。二人は、それを望んでいないけれど、僕は、その人に対しては、ふたをすることはできない、とわがままになるしかない。

休日に掛かってくる彼女からの電話には、気が張っていないから、出る勇気がまだ出ない。