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「まだ、清二くんは、何も考えなくてもいい」
 母の声が聞こえた気がした。
 ぼんやりとして、半分眠っていて、ここは何処なのか、と思い、母は僕がここに来たこと、ここにいることを、知っているのだろうか、と、半ば自分のことを、他人事のように思った。けれど、それ以上は、今は何も分からなかった。そう気づくと、眠気が強くなってきて、母の声も、再現することは出来なくなった。
 この場所から、絵を描いてみることは、悪くない、と思えた。母の言う通り、僕は何も、深くは考えていなかった。
 幾つもの種類の、煙の匂いがする。気のせいかもしれないけれど、眠ってしまう直前に、父が傍にいてくれる気配を感じた。