ウィンブルドンが終わって、感情的なこと。

 今日は、フェデラー疲れが残っていて、喪に服しているみたいな心境だった。あれほど人を応援したのは、何年ぶりか。深夜に一人で、力を入れてテレビを見ていた。昨年の二人(ロジャー・フェデラーラファエル・ナダル)の情況で、ぎりぎりフェデラーの勝利だった。今年は……

 ファイナルセットまで行ったのは、奇跡的だった。3-0で負けてもおかしくなかった。彼は、マッチポイント、事実上のマッチポイントといえるポイントを、10ポイントはしのいだ。あのレベルで、あの相手で、それは奇跡的だった。テニスの神様というのがいるとしたら、間違いなく彼の後ろにいた。彼の後ろにいながら、ナダルの方にも微笑みかけていた。第4セットのタイブレークは、美しかった。2-5から5-5に追いつく、7-8でナダルのチャンピオンシップポイント、ナダルのサービスで、リターンが返ってきたのを、ナダルフェデラーのバックに深くアプローチしてネットにつく、そこをバックハンドのダウンザラインのパッシング、あれが一番美しい所だった。
 3セット目に続いて、二度目のタイブレークを制した後のフェデラーは、精神力を使いつくした、という空ろな表情だった。精神的スタミナの配分が抜群に優れているフェデラーが、もうその時には疲れきっていた。ナダルの精神的疲労も激しいように見えたが、それは一時的な精神的ダメージが目立っていただけで、スタミナという面では、ナダルに分があった。2-2に追いついたのに、もう終わったというような雰囲気があった。

 正直、僕は悲しかった。あと一年だけ待ってください、と言いたい気持ちだった。けれど、フェデラーの新しい凄さを、見たような気もした。ずっとクールな深い目をしているフェデラーが、何度も子供のような目をした。その時、彼のプレーは危うくなったが、不思議にポイントは彼のものになった。