・・・的温かさについて

土曜日に、今日の仕事が、8時までに終わったら、あの韓国料理屋に行ってみよう、と思った。あの韓国料理屋とは、大学の先生に連れられて、過去に1度だけ行ったことのある場所で、インターネットで前もって調べていた。
仕事はちょうど8時に終わったので、地下鉄に乗って、谷町四丁目まで行った。前もってこの時間に仕事が終わると分かっていたら、誰かを誘うのもいいと思ったが、今回は諦めて一人で行くことにした。平日は行く時間がないし、日曜・祝日はその店が休みだから、今日しかない、と思った。
谷町筋を歩いていくと、その店が見つかった。店の中には、見覚えがあるようなカウンターとテーブルがあったが、以前来た所は2階だったので、明らかに違った。間違ったことに気付いて、周辺を少し歩いてみたが見つかりそうになかったので、その店に入ることにした。
入ってすぐ、靴を脱ぐようになっていた。スリッパはなかった。靴を脱いで、板間に上がった。
「奥の席にどうぞ。そちらの座布団、つかってください」と言われ、おそるおそる、カウンターの一番奥の席に座った。
メニューを開いて、すぐにマッコルリが載っていた。目当ての一つだった。捲っていって、もう一つの目当てのチヂミも見つかった。韓国ではチヂミを食べながらマッコルリを飲むもの、と書いてあった。その二つを注文した。女将さんとその娘さんのような若い女の人の、2人がカウンターの中にいた。日本語の発音が、少し聞き取りづらいようだった。マッコルリをグラスでもらった。甕に入れて、それをグラスに掬って飲む方法もあるみたいだった。マッコルリを飲みながら、店の奥の天井近くに掛けてあるテレビを見ながら、チヂミを待っていた。チヂミが出て来る頃に、マッコルリをちょうど飲み終わったので、もう一杯注文した。ヨーグルトを甘さ酸っぱさ控えめにした味で、アルコールの味も強くなく、自分の舌にも体にも合っていた。
チヂミは、大皿一面に載っていて、16に切り分けられていた。食べると、久しぶりにちゃんとしたチヂミを食べた、と思った。もちもち、だと家庭のお好み焼きだし、かりもち、だとお店のお好み焼きだし、カリカリ、はちょっと別の食べ物だけど、このお店のは、かりかり……もち?(そう、もちもあるんですよ)という食感だった。お腹も空いていたので、ぱくぱくと食べ、半分くらい食べた所で、ロース、ハラミ、豚トロ、エリンギの串焼きを追加注文した。
ここは何処なんだろう、と時々思ったが、とても落ち着いた。私の国籍は、とある人が言ったから、今ここにいるのだった。結局、国のことは、関係なくもなければ、関係あることもない、と相変わらずはっきりしないことを思って飲んでいた。テレビではK-1をやっていた。ピーター・アーツがあっさりと負けてしまった。若い人の中では結構好きなルスラン・カラエフも負けてしまった。それでいいのか、本当に、と自分勝手な不満を感じていた。
ロースとしいたけの串焼きと、キムチポッカを頼んだ(キムチポッカって、キムチとポークということですか?)。
キムチポッカも食べ終わった頃、ジェロム・レ・バンナの試合が始まった。少しだけみて、どうしようか迷ったが、潮時だと感じて、帰ることにした。
はっきり喋れば、はっきりした返事が来た。はっきりしないと、嫌な顔をされた。ほっとかれたり、はっきりした反応をされるのが、心地良かった。

今日はなんとなく難波へ行き、『レッドクリフ』を観た。そのストーリーとは関係ないかもしれないが、戦いが近くにあると意識しようとか、もっと人間らしく人と関わりたいとか思った。うらやましい、という気もした。銃も戦車もない戦いには、いろんな工夫があって、陣形も色々とみせてくれたので楽しくて飽きなかった。曹操の悲しい面も少しだけ描かれていて、男は弱いし、夢を見ている、と思った。冷静な男も、夢に対して冷静だけれど、夢が夢だとははっきり気付けない、多かれ少なかれ。