ロマンとモラル

お盆に実家に帰ったときに、『グレート・ギャツビー』を手に取った。大学生の時に、夏休みか何かの時に読んで、そのまま実家に置いてきたままになっていたか何かでそこにあったのだと思う。
一度読んだはずだが、内容は全く思い出せなかった。読み始めてみると、小説を最初に好きになった頃の気持ち、特にアメリカの小説に惹かれた頃の気持ちを思い出した。
吉本ばなな村上春樹を高校の頃よく読んでいて、二人とも『グレート・ギャツビー』の作者のスコット・フィツジェラルドの名前を挙げていたので気になって読んだ。
アメリカの社交の雰囲気が、そこで交わされる会話の雰囲気が、とても好きだった。軽快で華やかで正確な人物描写も、あからさまにならない華やかな嘘を交えながらお互いの距離に触れる感じを大事にするようなやりとりを、特別ではない人たちが、皆当たり前のように取り交わしている様子が好きだった。空虚さの苦みも感じさせるそのようなロマンが好きだった。裏側にはそのような不安定なロマンを支えるだけの健康的なモラルをもっている人もいれば、支えなくても時代の流れに乗って生きていける人や、支えるどころかロマンを加速させてしまうような異様な独特のモラルを持って生きているギャツビーのような人もいる。

グレート・ギャツビー (新潮文庫)

グレート・ギャツビー (新潮文庫)