発散2

もう一度文章を書くことになるなら、前とは変わっている、と感じたい。一番いい所を通り過ぎてしまっているのなら、改めてその場所の大事なものを取り戻したい。取り戻せたら、積み重ねてきたことと今が活きて、前とは変わっている、と感じられるということがあるはずだ。
 一番いい所、というよりも、それぞれの場所にいい所があったはずだ。それをちゃんと拾い集めて、昔のことは忘れたい。というよりも、執着するのはやめたい。本音で話すには、本音に気付かないといけない。そうでないと、愚痴のようなものが本音に見えてしまうし、話してしまう。
小説をまた少し、読むようになった。喫茶店に行くようになった。家でテレビを点けない時間が増えた。音楽を聴く時間が増えた。部屋を掃除する時間が長くなった。文章を書くことをもう一度考え始めた。母に初めて自分から電話をした。長年手紙を送ってもらっていて返事をしていなかったことを謝った。謝ったら、その言葉を自分自身で聞いて、それが本音だと分かった。産んでくれたことに感謝しても、やはりそれが本音だと分かり、自分の言葉に教えられた。分かってくれたらそれでいい、と言われた。