部屋と声

喫煙具を父に贈ろうと思ったこともあったけど、母も祖母も父にはたばこをやめてほしいと思っているので、気が引けて贈ったことはなかった。何となくかっこいいものを贈りたい気がするけれど。ものすごい頑張ったらプレイステーション4かな。でも正直しんどい。プラモデル券とかにしようかな。


父親のことを考えていたら、小説ではトルーマン・カポーティの『遠い声 遠い部屋』に帰ってきた。少年が父親を探しに出かけます。原題は『OTHER VOICES,OTHER ROOMS』だそうです。単なるフェチだけれど、口に出してタイトルを言いたくなる。アザー・ヴォイス、アザー・ルーム。よく意味もわからないまま、アナザーじゃないんだ、と思った。もっと遠いということなのか。


ほとんど話したことなかった女性に、好きな作家は誰、と聞かれて、少し考えてカポーティと言おうとしたら、ほとんど僕の声に重なるようにカポーティと言われてしまった。あれは19歳のときで、合同研究室と呼ばれる長い机のある部屋だった。


大学に入って1年半ぐらいは、9割ぐらいはアメリカの小説を読んでいて、その話をできる人は周りにはいなかったけど、2年ぐらいたって近い趣味の人とか、趣味とか関係なく小説をただ読む人や、小説に疲れて小説をただ読むことしかもう面白くないよと思う人や、一緒に頑張っていきましょうという人や、個人的に好意を持ってくれる人や、別に何でもいいよ(?)という人たちと知り合って救われたような気がする。よくわからない。本当のところはみんなどんな気持ちだったかわからないけど、助けられていたことは間違いない。


どこかへ行きたい、ということなのか。ここじゃない、と強く言いたくなることも、あっただろうと思う。


ここは、もう遠くもない。どこかわからなくもない。どこかへ行きたいという感じはない。