オルゴール、手紙、電話。


BGMにオルゴールがあるとき、いろいろと昔のことを思い出した。特に大学生時代のときのことを思い出した。実際に、頭の中で歩いてみた。最初の1年はいろいろと共同で使っていて、お風呂も台所も、洗濯機も共通だった。お風呂のところに自分の名前をホワイトボードに予約して書いたり、確か洗濯機も似たような感じだった。新入生歓迎のとき、自作の短歌をみな詠まないといけないことになり、実際詠んでみたけれど、季語が入ってないな、と強面の上級生に突っ込まれて、あ、芸大なんだな、と思った。


あっちこっち歩いて、懐かしい人に会った。すっと名前が思い出せない人もいたけど、少し一緒に歩くと思い出せた。こんな人いたな、と思ったけど、きっと僕もどこかで、こんな人いたな、と思われているかもしれない。


あのとき10年後の自分はどうなっているだろうと、たしか自分の部屋で隣の部屋から聞こえてくる音楽を聞きながら目をつぶって、思っていたはずだった。どうなっているか、というのは答えにくいけど、ただ、10年前の気持ちは、ふだんはゼロだけど、よく思い出せばそのまま残っていたし、多分60歳になっても一緒のような気がした。


母から突然電話があり、久しぶりに出ることができた。手紙を読んだことを伝えた。母は調子が悪いと言った。でも、声を聞いている限りでは、そこまでは悪くないような感じだった。心配をしてくれていたようだから、妙な心配をしてくれていたようだから、とりあえず健康に。