「吃る街(八)」下窪俊哉(『アフリカ』第11号)


『静岡さんの場合、足を地面にそっと載せるような、とんとんと柔らかい足の裏で床を叩く音になって、それが右に行ったり、左に行ったりする。踊っているような、楽しそうな音に聞こえた。』



足音の声のようなもの、という部分を読んで、この人は音の人ではなく、声の人であるのかもしれない、と思った。
足音は人それぞれ違う、というような無機質な言い方で、僕は今まで感じていた。

全てのものに、声がある。そのことが分かっている人の世界は、静かだ。白色に、ほんの少し薄い青が入っているような感じだ。

コーヒーの味にも声があって、楽器の音にも声があって、もちろん人にも声がある。話さなくても、声がある。



『アフリカ企画』
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